古代エジプトの猫崇拝
イザヤ・ベンダサンの「日本人とユダヤ人」の中で、「旧約聖書には猫という言葉が全く出てこない」と書いてある。ある人が調べたところ、旧約新約をあわせて猫が出てくるのは外典の「エレミアの手紙」の中の1ヵ所だけだという。しかも悪いたとえ話として猫が登場する。ユダヤ人は猫が嫌いのようだ。しかし隣国の紀元前5世紀頃の古代エジプトでは猫が大層かわいがられていた。ミイラにして棺桶に入れられたり丁重に葬られたことはよく知られている。猫が亡くなると飼い主は風習として眉毛をそって喪に服した。猫を殺すと死刑にされることもあったようだ。猫の守護神であるバステト女神がおり、猫たちにひどいことをする者に残虐な復讐するという。このように猫が崇拝される理由はやはり古代エジプトが農耕文明のうえに成立した国家であったことと関係がある。考古学の研究から、ペットとしての猫の祖先はアフリカンワイルドキャット(Felis sylvestris Lybica)と推測され、エジプトのナイル川沿いで穀物倉庫などを荒らすネズミなどを退治する目的で飼われたことから、人間に重宝され始めたと言われている。人々は農作物を食い荒らす水鳥を退治するため猫を飼う習慣があった。そして猫の存在に感謝し、神のように崇拝し、猫を守護神としたのではないだろうか。
ちなみに島国日本に猫は本来いなかったが仏教伝来とともに中国から渡ってきた。大切な経典をネズミから守るため益獣として輸入されたと言われた。しかし近年、カラカミ遺跡(長崎県壱岐市)の弥生時代(前1世紀)の遺骨が発見され、猫がむかしから存在していた可能性が探られている。中国で猫を飼う風習がはじまったのは前漢のころからで、唐代には犬や鶏とならんで家々で飼われるようになった。(Basted)
参考文献;金沢庄三郎「猫と鼠」 創元社 1947
今村与志雄「猫談議 今と昔」 東方書店 1986
後藤秋正「猫と漢詩 札記」 北海道教育大学紀要人文科学・社会科学編57-2,2007
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