眼鏡の歴史
メガネの発明者が誰であるか正確にはわからない。原理はアラビアの学者アルハーゼン(956-1038)やイギリスのロジャー・ベーコン(1214-1294)によって研究されたが、メガネを使っていたという記録はない。1021年にイブン・アル・ハイサムが出版した「光学の書」が12世紀にラテン語に翻訳されて、13世紀イタリアでメガネが発明されたとみられている。発明者は①フィレンツェの貴族サルヴィヌス・アルマタス②ピサのフラ・アレッサンドロ・ダ・スピナ③フィレンツェのアルマルト・デグリ・アルマティなど諸説ある。そのほか13世紀末のイタリアでメガネを使用したとする断片的な記録が多数残っている。その年代は1284年とされている。
メガネが描かれている最も古い絵画は、イタリアにあるサン・ニコロ修道院のトマソ・ダ・モデナ(1325-1379)という画家による、ある枢機卿の肖像画(1352年)である。ラファエロが描いた教皇レオ10世の手もとにも、レンズがひとつの拡大鏡のような形のメガネが描かれている。下の画像「レオ10世と2人の枢機卿の肖像」(1518~1519年)。
最初のメガネは老眼鏡で、次いで近眼鏡ができる。レンズがふたつのメガネは、ふたつの虫メガネの柄の先を鋲でひとつに留めたようなものであったから、手で押さえたままでいるか、バランスよく鼻の上にのせておくかであり、長時間着用するのは困難であった。メガネの素材は最初、水晶や緑柱石のような鉱物が使われていたが、そして後にガラスが使われるようになっていく。ガラス工業が盛んであったヴェネチアは、14世紀になるとメガネの産地として知られるようになった。(Salino D'Armate,Tomaso da Modena)
日本で眼鏡がつくられるようになったのは、1620年ころのこと。浜田弥兵衛という船乗りが、オランダの領地だった東南アジアの島から眼鏡のつくり方を学び、その技術を長崎の生島藤七という職人に伝えたという。ちなみに、眼鏡がずり落ちないようにするための、鼻あての部分を、初めて作ったのは日本人だといわれている。
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