読みにくい名前はなぜ増えたのか
「雄」と書いて「らいおん」と読む。「亜人夢(あとむ)」、「瑠美衣(るびい)」、「希空(のあ)」、「澄海(すかい)」、「柊希(しゅうき)」「心陽(こはる)」・・・アニメキャラクターのような名前の子供が増えている。ある親が小学生の名簿を見てびっくりした。女子の名、「○子」は100人のなかで、わが娘たった一人だった。少子化のため親は我が子に個性的な名前をつけるようになった。比較的平凡な感じがする「子」のつく女子名は避けるようになった。古風というか、真面目という感じが将来どのように捉えられるか親が不安であり、「子」を避けるようになったのであろうか。2016年の新生児で「〇子」はわずか3%にすぎない。
女子の名に「子」とつけるのが流行するのは明治33年頃に急増する。津田梅子(1864-1929)は、初名は「うめ」であるが、明治35年に漢字表記を「梅子」に改めている。与謝野晶子(1874-1942)も本名は「志ょう(しょう)」であるが「晶」(しょう)、そして「晶子(あきこ)」という筆名を使用している。「〇子」という命名は女性が輝くシンボルとなった。
武者小路実篤の明治41年の処女小説「芳子」に次のような下りがある。「兄は「なんという名をつけよう」「しる子がいい」「団子がいい」「きな子がいい」などふざけてはいたがいい名が考え出せない。」 この当時、すでに女子に「○子」は一般的になっていたらしい。だが子が付く女子は昭和39年、高度成長期の頃から次第に減少していった。背景にはテレビの普及とアイドルタレントによる影響があるらしい。とくに昭和32年に「明美」という名前が登場したのをきっかけに、「直美」など「子」が付かない名前が増えてくる。キラキラネームが増えたのは1990年代半ばごろから。ちょうどインターネットが普及し始め、難しい漢字も検索で手軽に調べられるようになってきた頃である。最新の「キラキラネーム」ベスト5。皇帝 しいざあ、一心 ぴゅあ、大海 おーしゃん、姫星 きてい、愛羅 てぃあら。しかし塾講師の林修は経験上から読める名前の生徒のほうがキラキラネームの子よりも成績が良いという。つまり本人には全く責任はないとしたうえで、キラキラネームと学力にはある程度の相関性があるという見解を示している。
(参考:佐藤稔「読みにくい名前はなぜ増えたか」、橋本淳治・井藤伸比古「子のつく名前の誕生」)
« シェイクスピアと徳川家康 | トップページ | 海上述林 »
「苗字」カテゴリの記事
- 人名研究・北京五輪とウクライナ(2022.03.04)
- 最近英米にフランクという名が減少した理由(2021.12.12)
- 覚えておきたい名前、知らなくていい名前(2020.11.23)
- The Donald( あのドナルドだよ)(2020.06.08)
- 英米人によくあるお名前(2020.05.27)
流行とは言っても、音の響きを当て字の漢字を当てはめる名前のつけかたが流行してるようで、「なんじゃこれは」という名前がある。
困った流行です。
投稿: 根保孝栄・石塚邦男 | 2013年2月17日 (日) 00時42分
ダイヤモンド・ユカイさん、今や3人のお子さんのパパ、良かったですね。「オレはバラのような棘のある女が以前は好きで、そんな女とばかり付き合って懲りたから、野の道端に咲いてる可憐なたんぽぽのような女性を妻にしたんだ」と言ってたのが、しばらくして、「最近、たんぽぽにも棘が出てきたんだよね」と言うのには笑いました。
投稿: | 2014年11月16日 (日) 18時52分