外題学問
小説、ドラマ、映画などタイトルが大事だろう。いかに読者(視聴者)の関心や興味をひきつけるか。最近、「亀は意外と速く泳ぐ」「亀も空を飛ぶ」「人のセックスを笑うな」「ニワトリはハダシだ」「暗いところで待ち合わせ」「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」など長いタイトルで内容がわからないものがウケているようだ。昔なんだか分からないタイトルには名作が多かった。「熱いトタン屋根の猫」「欲望という名の電車」「月曜日には鼠を殺せ」「逃げるは恥だが役に立つ」などなど。「郵便配達は二度ベルを鳴らす」には郵便配達夫は登場しない。運命はさけられない、という意味らしい。ひところ流行った「○○物語」とかヒロインの名前のもの、などありふれたタイトルは影をひそめている。小津安次郎の「東京物語」、今井正の「純愛物語」など名作にあやかり、「早春物語」「愛情物語」「仔鹿物語」「国東物語」「子猫物語」「南極物語」「タスマニア物語」「花物語」「パンダ物語」が続々公開された。女性ヒロインをタイトルにするのは、NHKの朝の連続テレビ小説が得意だが昭和58年の「おしん」では大ヒットだったが、以降、「チョッちゃん」「ノンちゃんの夢」「純ちゃんの応援歌」「和っこの金メダル」「ひらり」「かりん」「ぴあの」「あぐり」「あすか」「さくら」「こころ」「つばさ」と逓減している。思うに「○○物語」とか「つばさ」とか、作品のコンセプトがタイトルにでていない。書名も洒落たタイトルには名作がある。好きなタイトル。「ちょっとピンボケ」(写真家ロバート・キャパ)、「ツァラトゥストラはかく語りき」(ニーチェ)、「死にいたる病」(キルケゴール)、「五体不満足」(乙武洋匡)、「狭き門」(ジッド)、「サラダ記念日」(俵万智)。
数年前に映画「魁!!クロマティ高校 THE☆MOVIE」という映画が封切り前になって、元巨人のウォーレン・クロマティから無断で名前を使用されたというパブリシティ権の侵害が東京地裁に仮処分申請があった。「実在の人物とは無関係」というテロップを入れることで合意した。その後、損害賠償に関する動きについては不明である。原作は既に7年間も少年マガジンに連載されたものであるので、日本側では今さらの感がなきにしもあらず、という一件だった。スポーツ漫画は伝統的に実名が登場するのが当たり前になっている。つかこうへいの「長嶋茂雄殺人事件」(昭和61年)などもとくに問題にはならなかった。過激なタイトルを求めるあまり、とこまでが許容されるのかいろいろ問題を含んでいるようだ。
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コメント
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「殺人犯はそこにいる」…友人が、すごく引き込まれる内容とのことで、是非読んでみて、と貸してくれましたが、本当に一気に読み進めてしまいました。推理小説の類いかと思いきや、この本に書かれているのは「事実」なのです。圧倒されます。
投稿: イクちゃん | 2017年4月29日 (土) 21時39分