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2016年11月16日 (水)

その言葉遣い、正しいですか?

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植木等「日本一の色男」の主題歌「どうしてこんなにもてるんだろう」

   最近「べっぴんさん」を見ていて、不自然な言葉遣いが気になる。すみれの夫は出征から戻らず、ある日、夫の父から話があるという。「紀夫は戦死した可能性がある」という。ふつう「可能性」という言葉は期待値を込めた時にしか使わない。例えば「成功の可能性が高い」「生存している可能性もある」「無限の可能性を秘めている」というように。この場合は、「もう何の連絡もないのをみると、戦死した恐れがあるよ。紀夫に縛られなくてもいいよ」といったほうが適切であろう。

    NHK朝の連続テレビ小説「おひさま」の放送(2011.4.21)で陽子(井上真央)が次兄の茂樹(永山絢斗)に向かって、「そんなこと言うと、(女の子に)もてないわよ」というセリフがある。「もてる」という言葉が「女(男)にもてる、好かれる」という意味で使われだしたのは何時頃だろうか。もともと「もてる」は「興味がもてる」「親しみがもてる」とか使うのが一般的である。それが「もてはやされる」から「人気がある」「好かれる」という意味が加わって俗語となった。青空文庫のグーグルで検索し、古い小説から引用例を調べてみる。「女にもてる」の用例は少ない。坂口安吾「花火」(サンデー毎日臨時増刊号 昭和22年5月1日号)に「いまにも自分たちが色男で女にもてる性で」とある。「もてる」は坂口が小説に使用しているからには一部の進んだ人は使っていたであろう。一説によると江戸時代から「色男」はよく使われていたから、「色男で(女に)もてる」という表現はあったとされる(「日本語俗語辞典」)が、使用例は不明。

    島崎藤村「家」(明治43年)に「大いにモテるネ」とある。また夢野久作「少女地獄」(昭和11年)に「私が一番モテたのは運動会の時だった」などがある。これには、「異性にモテる」というよりも「人気がある」「好かれる」に近い表現である。「大もて」という言葉はよく使われたようだ。

  そうするとドラマの舞台となった昭和15年前後には、すでに「もてる」という言葉は存在していた可能性は十分にあると推測されるのだが、信州の女学生が兄に対して、「そんなこと言うと、女の子にもてないわよ」という俗語が、やっぱりあの時代、有り得ないと感ずるのはケペルだけだろうか。「女にもてる」とか「もてない」とか女子が言うこと自体、はしたないとされていた時代である。そもそも男尊女卑の観念が支配的だった戦中に、男が女性から好意をもちれることを最優先するという観念は時代的にみて有り得ないように思う。しかし当時、海軍では「MMK」というハイカラな隠語があったそうだ。意味は「もててもてて困る」である。戦後、映画「銀座のお姐ちゃん」(昭和34年)で団令子が若い男に「あんたMMKね」というシーンがあり、ちゃん姐語として若い女性の間で大流行した。いまでは「モテる」ことが男子の行動の基本にあるようになった。「イケメン」とともに「もてる」は日常語であるが、派生語として「モテ髪」「モテ服」などファション誌には頻繁に登場する。

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コメント

植木等は映像での明るくひょうきんでお調子者の役柄とは全く違い、素顔は寡黙で真面目とのこと。

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