「四本足のニワトリ」論争
来年の干支は酉(とり)。1980年春に行われた旭川医科大学の入試試験に次のような小論文が出題された。受験生は、10分間で「にわとり」と「はえ」の絵を描くように指示され、その後、足が4本の「にわとり」や8本足の「ハエ」の絵が配布された。そして、「三歳、四歳児でも鳥の絵は描けるのに、日本では満足に描けない大学生がいる。配布されたような絵を描く学生が多く現れるにいたった背景について、現代日本の社会、生活、教育、学習環境などの問題を主体的に受け止め、所見を述べなさい」との課題が課せられた。これが、国公立大学の二次試験の内容を取り上げたいくつかの新聞記事の中で紹介され、追随的な調査結果が次々と発表された。それによると、各年代とも一割弱程度の人間が、四本足のニワトリを描いていたということである。医学教育だけでなく、初等・中等教育期の理科教育の問題として取り上げられ、「自然離れ」「理科離れ」と指摘された。坂元忠芳は「子供の認識能力の衰弱や歪み」を問題視し、蓑田源二郎は「直接的なリアル体験が非常に少なくなり、間接的な映像によるヴァーチャルな体験が多くなってきたから」と分析している。佐伯胖は「ニワトリを犬、牛のような家畜と意識したため、四本足のニワトリを描いた」とする。このように「四本足のニワトリ」論議は主に1990年代の教育界を沸かせたテーマだったが、近年では養鶏場で多肢症のニワトリは低確率ながら、一定比率の割合で誕生することが報告され、自然界に四本足のニワトリが存在しないわけでないことが知られている。(参考:栗田真司「四本足のニワトリ考」 世界思想26、1999年)
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