その人が一生背負うもの、それが名前である。最近では、読めない名前が多いことが話題になっている。大翔、陽菜、宇宙、太陽など「ひろと」「はるな」「そら」「ひかり」と読めないですね。どのような名前が良い名なのか、あるいはキラキラネームなのか、各個人の主観によるため判断基準は難しい。「大翔」の「翔」を「と」と読ませるのも「かける、とびめぐる、とぶ」から当てたものであるが、音は「ショウ」であり、「ト」と読ませるのは無理がある。実際「大翔」の読みには「ひろと」「はると」「やまと」などいろいろあるらしい。だが毎年の名前人気ランキング上位に入っているので、日本人の名前として一般的になっていくと思われる。ちなみに2016年女の子のかわいい名前、第1位は「結菜(ゆいな)」だそうだ。
10数年前、親が良い意味がある名前をつけたが、字が難しく、女性のような名前だとして、少年時代よりイジメにあい、改名したが、それでも親への恨みが収まらず、息子が命名した父親を殺害するという悲劇的な事件があった。「鼎(かなえ)」という名前で、ある程度の教養ある人なら読める漢字である。古代中国で宗廟に供える最も重要な祭器で、そこから身分の高い人をいう。「鼎の軽重を問う」(相手の実力を疑ってその地位を覆そうとすること)の故事もよく知られている。本人がもっと成長し、社会で活躍すればさぞかし立派な名前であったと思われるが、未熟な時期にすれば、その名前に違和感がともなったのであろう。この鼎殺人事件は名前の命名に心すべき教訓が含まれているように思われる。赤ちゃんの名づけには、どのようなポイントを注意すべきだろうか。
①無理はしない。たとえば命(いのち)、絆(きずな)、天空(らぴゅた)など、人名としては無理がある。
②漢字は普通なのに、人名として不適切な意味が含まれる場合がある。「満子(みちこ、みつこ)」、「佐世子(さよこ)」など、一見ふつうと思うが、性的なイメージをおこさせる。「まんこ」「させこ」と読まれる。
③ハーフでもないのに欧米人のような名前をつけることがある。「じょうじ」「なおみ」「えりか」といった具合に元々は外国人の名前だったが、昭和期に一般化した。これからも増加するが、自然に当てはめられものであるかがポイントとなる。
④鼎殺人事件でも問題となったのが男女の区別がつきにくい名前である。「かおる」「ひかる」「のぞみ」「しずか」など、以前から男女の区別のない名前はある。明治以前、発育が不十分な子供に、実際の性別とは逆の性別にうけとられる名前をつけることで、健康を祈願する風習があったことが起源とされる。しかし就職、結婚など性別の誤認されるリスクも考慮しなければならない。
⑤おそれおおい名前。神や救世主といった畏れ多い名前。キリスト、裕仁など。しかし外国ではサルバトーレ(救世主)など普通に命名される場合もある。家康や信長なども、将来、本人がその名前に負けなければいいが。
⑥難解な名前。それ自体には良い意味やいわれがあるものの、画数が多かったり、難解で周囲や本人が理解できず、結果として珍奇ネームになってしまうケースがある。鼎殺人事件が典型例であるが、世の中には「鼎」よりも難しい名前の人はいくらでもいる。親権者が個人的な好みに走らず、子供が成長して誇りに思える名をよく考えるべきであろう。
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