朝日平吾、安田善次郎を暗殺
巨富を作すと雖も富家の責任を果さず。国家社会を無視し、貪欲卑吝にして、民衆の怨府たるや久し。予、其の頑迷を愍み、仏心慈言を以て、訓ふると雖も改悟せず。由て天誅を加え、世の警めと為す。
大正10年9月、国粋主義者・朝日平吾(1890-1921)は斬奸状「死の叫び声」を起草、遺書をしたため、9月28日午前9時20分、安田善次郎(82歳)を大磯神明町の別邸で短刀で刺殺し、その場で自殺した。善次郎は一代で巨富を築き安田財閥の祖となった。オノ・ヨーコの曽祖父である。
犯人の朝日平吾は、東京の弁護士風間と称して善次郎に面会、寄付を要請して断られると短刀で切りつけ、安田が書院から逃げて庭に転落すると馬乗りになってさらに胸、咽喉を刺した。安田の死を確認した朝日は書院縁側にもどり、西洋カミソリで自分の首を切り自殺した。遺書で、朝日は富豪、元老、政治家、顕官、華族を激しく攻撃、「余ノ盟友ニ残ス」に始まる末尾の章では一人一殺のテロリズムを賛美した。この年は第一次世界大戦後の物価高騰で庶民は苦しい生活を強いられ、米騒動が全国に広がっていた。11月4日には、朝日を英雄視した19歳の中岡艮一が東京駅改札付近で総理大臣原敬を刺殺している。(参考:奥野貫「嗚呼朝日平吾」)
最近のコメント