丙吉「牛の喘ぎ」
漢の宣帝のころ。丞相の丙吉(生年不詳-紀元前55年)が外出したとき、路上で乱闘事件があり、死傷者が出るという騒ぎにぶつかった。しかし、丙吉はそ知らぬ顔をして通りすぎる。その後、また外出したとき、牛が舌を出してあえぎながら車を引いているのに会った。するとこんどはわざわざ属官を車引きのところにやって、どのくらいの距離を引いてきたのかたずねさせた。属官が不審に思って丙吉にたずねたところ、こう答えたという。「路上の乱闘を取り締まるのは長安令や京兆尹の職務である。丞相の職責は陰陽の調和をはかるところにある。それで牛の喘ぎを心配したのだ」。臣下はこれを聞くや、ことごとく感心したという。
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