ヒトラーという姓
第二次世界大戦のことがマスコミなどでよく取り上げられる。最近はヒトラーのちょっとしたブームで世界恐慌から奇跡的な経済復興をとげたヒトラーの経済政策を評価した本も出版されている。先日ドイツの古い実写フイルムがテレビで流されていた。ときは1933年の5月10日の夕刻。学生たちはゲッペルスの言葉に応え、積みあげた薪のうえに、本をつぎつぎと投げ込んでいた。レマルクの「西部戦線異状なし」。トーマス・マンの「魔の山」、ホイヒトバンガーの「成功」、アルノルト・ツバイクの「グリシャの軍曹」、ブレヒトの「パール」や、その他の本が焼かれた。ジークムント・フロイト、エミール・ゾラ、プルースト、H・G・ウェルズ、アプトン・シンクレア、ヘミングウェイ、アンドレ・ジッドの作品も炎に投ぜられた。全部で、2万冊以上の本が灰と化した。なかでも象徴的だったのがハインリッヒ・ハイネの詩集であった。ハイネといえば日本でも明治以来、恋愛詩人として知られているが(実際は恋愛詩だけではないが…)、ドイツでは必ずしも人気があるとはいえなかった。その理由はナポレオンを崇拝したからか、否、ハイネがユダヤ系だからか。ともかくもむかしから反ドイツ的とみられていたらしい。ヒトラーの反ユダヤ主義は狂気じみていたし、民衆もその狂気を支持していた。本を焼くことは、狂気の沙汰である。
ところでヒトラー(Hitler)という姓を名乗る人は現在いるのだろうか?ドイツ東端の町ゲルリッツにロマーノ・ヒトラーさんが現在も住んでいる。だがこの姓のため、ろくな職に就けず、結婚もできなかったという。もともとヒトラーはオーストリア人だった。ヒトラーの父、アロイスの母親の結婚した相手が「Huettier」の姓を持っており、「ヒュットラー」あるいは「ヒードラー」に近い訛った発音だった。その後、成人したアロイスは私生児である過去を嫌って、「ヒトラー」とした説がある。言語学者ユルゲン・ウードルフによると、ヒトラー姓はドイツ南部バイエルン地方やオーストリアに伝わる「地下水脈」「泉」などを表わす方言が語源だという。最近、オーストリア北部レオンディングにあるヒトラーの両親の墓が撤去された。
« 中黒の研究 | トップページ | 映画「青い山脈」封切り »
「苗字」カテゴリの記事
- ヤロスラフ(2024.09.05)
- 名前に「平」がつく意味は?(2024.04.26)
- 私の名前は大久保清です(2024.04.19)
- 人名研究・北京五輪とウクライナ(2022.03.04)
- 最近英米にフランクという名が減少した理由(2021.12.12)
コメント