フローベールの一語説
1880年のこの日、フランスの小説家フローベールが亡くなった。生島遼一(1904-1991)は次のように述べている。「フローベールは文体というものを、小説家が自分の観念をうまくはめこんでゆけばいい出来あいの鋳型のごときものとは考えなかった。一つの観念、一つの視覚、それを正確に表現するには、唯一の表現、唯一の言葉あるのみで、それを求めるのが芸術家の働きだといちずに信じていた。路傍の小石一つ一つに特色を見出いだし、特殊の表現をさがせ、というのがかれの信条だった」(『文体』)
ともかくフローベールは、一つの目に見えるものを、正確に表現するためには、たった一つのことばがあるのみであると考えた。これが有名な一語説というものである。それほどフローベールは表現に対して厳格な立場を守った作家であり、芸術至上主義の作家といえるものである。(5月8日)
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