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2016年4月10日 (日)

桃源郷

   人々があこがれるユートピア観念は理想郷訪問譚を発展させた。理想郷訪問譚は幸運な者が訪ねてそこで歓待され、宝物を与えられて戻ってくるというテーマの物語である。そこは時間までがこの世と異質で、そこでの瞬時は人間世界の数年にも数十年にも相当する。したがって不死不老の国、常世の国ともされるが、冥界同様に訪問者は往々にしてタブーを課せられ、それを破って現実世界に引き戻されるという運命を辿る悲劇の物語ともなる。浦島太郎の常世の国訪問や陶潜の「桃花源の記」などがある。「捜神後記」によれば、晋の太元年間、武陵に住む男が魚を獲りながら谷川を舟でさかのぼると、谷川は桃の花の咲く山で終わりとなった。山には小さな穴があり狭い穴のなかをしばらく進むと、突然視界が開け、広い田畑があり立派な家々が建ち並び、犬や鶏の鳴き声がのどかに聞こえた。往来する男女の服装も武陵の人びととはまつたく違い、みな満ち足り、楽しげな様子であった。人びとは漁夫を見て驚き、家に招いて酒宴をもてなした。彼らの祖先は秦の乱世を避けてこの地にやって来て隠れ住んだと語り、彼らは漢の時代も魏や晋の世のこともまつたく知らなかった。数日の滞在後、漁夫は村の人びとに別れを告げて舟で川を下り、郡役所に出頭して太守に隠れ里のことを報告した。その後、漁夫は太守の命令を受けて再び谷川を上ったが、二度と桃源郷に行き着くことができなかった。

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