ういろう
名古屋銘菓として知られる羊羹に似た菓子を「ういろう」という。名古屋の「小倉ういろ」を売る餅文という店は、万治2年(1659年)の創業という。もとは「外郎餅」と呼ばれていた。「外郎」という薬に似ていることからそういわれた。外郎薬とは、江戸時代に小田原や京で売り出された、たん切りの薬であった。そのなかの透頂香(とうちんこう)という細長いものの形に似せて作った菓子が外郎餅として売り出されたのである。
もともとは「外郎」の語は、中国の官名にもとづいている。元の礼部(天地の神の祭りや宮廷の葬儀を扱った役所)員外郎という役にあった陳宗敬が、元滅亡後の室町時代、足利義満の頃に来日し博多に移住し医術を業として、陳外郎(1322-1395)と名乗り、外郎薬を創製した。子孫も代々外郎と名乗り、のち宇野氏と改名した。
市川団十郎(二代目)が激しい咳に悩まされたときに服用したところ、たちどころに咳が止まったという。感激した団十郎が、この話を歌舞伎にして上演したことで有名になった。同時に外郎は、渋い薬の口直し用の薬として、江戸時代の当主が小田原に移り、透頂香と名付けて売り出した。菓子の「ういろう」はこの薬の名に由来するといわれている。(武光誠「歴史から生まれた日常語の由来辞典」、エポニム)
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とても魅力的な記事でした。
また遊びに来ます!!
投稿: 職務経歴書 | 2013年5月20日 (月) 01時16分