啓蒙思想と照明器具の発達
17世紀後半にトマス・ホッブズやジョン・ロックが展開した経験論的な認識論や道徳哲学や政治思想が、西欧における啓蒙思想の幕開けとなる。18世紀になるとイギリスからフランスに伝播し、イギリスより激しいものとなって発展・普及し、フランスを啓蒙思想の中心地へと押し上げる。主な啓蒙思想家はモンテスキュー、ルソー、ヴォルテール、ディドロなど。啓蒙思想とは原語で英語Enlightement、仏語Lumieres、独語Aufkiarungとあるように、光で照らされること、「蒙(くら)きを啓(あき)らむ」である。自然の光(ラテン語 lumen naturale)を自ら用いて超自然的な偏見を取り払い、人間本来の理性の自立を促すという意味。当時、西欧では書物に親しむという行為が、暗闇に光がもたらされるという考えが一般に認識されるようになってきた。つまり印刷術の普及により書物が大量に生産されるとともに、ランプなどの照明器具の発達も見逃すことはできない。イギリスのジョージ・フリードリヒ・ケルスティング(1785-1847)の絵画には若い女性がランプの明かりで読書している姿が描かれている。当時流行の啓蒙思想を読書によって暗喩したと思われる。電気照明が出現するのは19世紀を待たなければならない。
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