ローラ・モンテス
1848年3月13日、オーストリアではウィーンにおいて三月革命が起きて、ウィーン体制の象徴的人物であったメッテルニヒが失脚し、イギリスに亡命した。南ドイツのバイエルン王国では3月21日、ルードヴィヒ1世(1786-1868、在位1825-1848)が退位を余儀なくされた。しかしこの退位騒動は政治的理由というよりも、王の愛人の野心的な行動に国民が離反したものであった。その女性の名はローラ・モンテス(1818-1861)。
ローラはスペインの舞姫ということになっているが、実はスコットランド出身で本名をマリー・ドロレス・エリザ・ロザンナ・ギルバートといい、貧しい旅芸人の子だった。60歳を過ぎていた老王は、このローラに夢中になり、二人の愛人関係を公然としたものにするために、ローラにランスフェルド公爵の称号を授けた。王宮ニンフェンブルク城には宮廷画家ヨーゼフ・シュティーラーが描いたローラ・モンテスの肖像画がいまも飾られている。ローラはその美貌によりルートヴィヒ1世をはじめ、ピアニストのリスト、プロイセンのビスマルク、アレクサンドル・デュマなどの男たちを虜にした。彼女の華麗で退廃的な恋物語はマルティーヌ・キャロル(「歴史は女で作られる」1956年)やフロリンダ・ボルカン(「ローヤル・フラシュ」1975年)で映画化されている。
ちなみに、近代ファションの父といわれるポール・ポワレが1906年に発表したハイ・ウェストのドレスを「ローラ・モンテス」と名づけたのは、ヨーロッパ社会にはスキャンダラスな高級娼婦に対する憧れと賞賛が入り混じった感情があることのあらわれであろう。小説中の人物であるが「椿姫」のマルグリット・ゴーチェの人気が高いのも同様の理由からである。(Lola Motez)
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うーむ、ルードヴィヒ1世、老いらくの恋に夢中になってしまったのね。貧しく生まれた女性が、類いまれな美貌を武器にして権力者や地位、名声のある殿方を虜にして栄華を極める。古来から、何処の国にもある事実ですなぁー。
投稿: | 2014年3月13日 (木) 10時24分