美術の起源
人類学・考古学によれば、アフリカで生れた現世人類は、やがてアフリカを出て、アジア、オーストラリア、ヨーロッパ、アメリカへと世界各地へ広がっていった。この何十万年という長い歳月のうちに人類は石を用いて道具を作りはじめた。この時代を考古学では旧石器時代と呼んでいる。この時期の初期・中期には石を打ち砕いて形どったさまざまな打製の道具が作られたが、その中には早くも左右均等を保った美意識によって形どられたものが見られる。人類の造形活動はこのように道具を用いるようになったときにはじまったと見てよいが、そこでは未だ純粋な意味での美術作品、すなわち絵画や彫刻のようなものは見られず、原始人の造形が現代人の美的観賞に価するようになるのは旧石器時代後期、紀元前3万年から前1万年にかけてである。1879年北スペインのサンタンデル県のアルタミラ洞窟で動物を描いた壁画が発見され、続いて1940年にはフランスのラスコー、ロウセル、フォン・ド・ゴーム、二オー、レ・トロア・フレールやほかでも、同じような画が発見された。これが人類の残した最初の美術と考えられ、これらを総称して一般にフランコ・カンタブリア美術と呼ぶ。この期に残されている造形が如何なる意味や目的によって制作されたものか定かでないが、狩猟の成功を祈願するためや、生存ための呪術的行為とする見方が強い。(参考:前田正明「西洋美術史」武蔵野美術短期大学)
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