コロンブスの卵
コロンブスという人物については、スペイン女王イサベラの援助を得て、1492年新大陸を発見したことは誰でも知っているが、彼の生涯や思想についてはあまり明らかではない。だが「コロンブスの卵」という逸話はとても有名である。帰還したコロンブスの功績を祝う晩餐会での話である。偶然がともなう大発見は、単に海を西へ進んだだけでだれでもできるという噂をしたり、妬むものもいた。席上、コロンブスは一同をみわたし、テーブルの上に、ゆで卵を立てることができるか、という問題を出した。みんなが試みるものの、卵はころころところがるだけで、誰も成功するものはなかった。そこでコロンブスは、卵のはしをテーブルにこつんと叩きつぶして手を放した。すると、卵はそのまま倒れずに立った。「なんだ、そうすれば誰でもできる。なんでもないじゃないか」と言いあって笑った。彼は「そうです。卵を立てるなどなんでもないことです。でも、あなた方は誰ひとりとして気づかずいたのです。最初にやるのが貴く、大切なのです」と言った。最初に行うことの大切さをわかりやすくみんなに説いたのである。この有名な逸話は残念ながら本当にあった話ではない。イタリアの歴史家ジロラモ・べンゾーニが「新世界の歴史」(1565年)でコロンブスの偉業を脚色して建築家ブレネレスキの逸話を元に創作して書いたといわれる。今日では、何でもないようなことでも、最初に行ったり考えたりするのは困難であるということの慣用句として使われている。(世界史こぼれ話)
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