サムソンとデリラ
イスラエルが40年にわたってぺリシテ人に苦しめられていた時、ダン族のマノアにサムソンが生まれた。マノアの妻は不妊の女で、子を産んだことがなかったが、サムソンの誕生は「不思議」という名の神の使いによって約束されたものであった。ただし生まれてくる子供は、生まれながらの木から産するもの、酒、汚れた食物を口にすることを禁じられ、頭にかみそりを当てることも禁じられていた。この種の人をナジル人と言った。
サムソンは神に守られ成長し、神の霊がしばしば彼に臨む時、彼は子やぎを裂くように素手で獅子を引き裂き、ぺリシテ人の町アシケロンで30人を殺し、彼を縛った二本の綱は火に焼けた亜麻のようになって落ち、手にしたろばの骸骨一つ一千人を打ち殺した。また、その他にも彼の超人、怪力ぶりはぺリシテ人への復讐にきつね三百匹捕え尾と尾を結んでその間に松明を結びつけ、松明に火をつけてぺリシテ人の畑に放してこれを焼き、或いは閉じ込められたガザの町の城門の門柱と扉を貫の木もろとも引き抜き、肩にかついでへブロンの向かいの山頂に運び上げたことも示されている。
サムソンは神意を受けてぺリシテ人の女セマダルと結婚し、婚礼の宴に集ったぺリシテ人30人に「食べる者から食べ物が出た。強い者から甘い物が出た」との謎を解くことを求めた。彼が殺した獅子の肉に蜂が群なし、蜜がたまっていたことを意味し、この謎解きに晴着と亜麻の服各30着を賭けた。謎を解くことのできなかった30人はサムソンの妻を脅迫し、7日目にこの妻を通して答を引き出すことに成功した。「蜂蜜より甘いものは何か。獅子より強いものは何か」するとサムソンは言った。「わたしの雌牛で耕さなかったなら、わたしのなぞは解けなかっただろうに」
そのとき主の霊が激しく彼に降り、サムソンはアシケロンの町でぺリシテ人30人を殺害し、はぎ取った晴着を、謎を解いた者に与えた。秘密をもらした妻をその父は花婿付添人であった男に妻として与え、これを怒ったサムソンは狐を使ってぺリシテ人の畑を焼いたのである。ぺリシテ人はユダの人々を脅迫し、サムソンの引き渡しを要求した。この時サムソンを縛った綱は火に焼けた亜麻のように解け、サムソンはろばの顎骨で一千のぺリシテ人を撃ち倒したのである。
ガザの城門を引き抜いた後、サムソンはソレクの谷に住むデリラという女を愛した。ぺリシテ人はサムソンの怪力の秘密を聞き出そうとデリラを買収した。サムソンはデリラに偽の情報を与えて三度彼女の願いをかわしたが、ついにデリラの哀願にまけ、その秘密を漏らした。かみそりを当てたことのない頭髪が力の源泉であった。デリラはひざの上でサムソンを眠らせ、人を呼んで彼の髪をそり落させ、ぺリシテ人に引き渡した。サムソンは両眼をえぐられガザに引かれ、獄で青銅の足枷を繋がれて臼を曳かされる身となった。
ぺリシテ人の君侯たちが集まって、彼らの神ダゴンに犠牲を献じる日に、サムソンは群集の前に引き出された。男女が集い、屋上には三千の見物人がいた。サムソンは二柱の支柱の間に身を寄せ、身を屈めて柱を圧した。家は崩れ、そこに居た者たちは皆圧し潰された。サムソンの頭髪は再び伸びていたのである。サムソンも死んだが、この時殺した者の数は彼が生前殺したものより多かった。やがて彼の亡骸は親族に引き取られ、故郷の父マノアの墓に葬られた。彼の活躍したのは20年間であった。
士師記の英雄たちの行動は、多くのクリスチャンを当惑させる。このような人々の信仰をどうして推奨することなどできるだろうか。どのようにして神はこれらの人々を用いることができたのであろうか。このような問いに対しては、完全に満足のいく答えをだすことはできない。神は、その生活が非難の余地なしとはとてもいえないような人々や、全く間違った動機から行動している人々をさえお用いになったのであり、現在も用いておられるということである。聖書の中で、彼らの不道徳は大目に見られてもいないし、もっともらしいこじつけの解釈もされていない。ただ彼らの信仰と勇気だけが推奨されているのである。神は、一見、希望のない、堕落した時代においても、ご自身の究極の目的が妨げられるのをお許しにはならないのである。
セシル・B・デミル監督の映画「サムソンとデリラ」(1949年)は迫力の演出と絢爛豪華なセットで聖書世界の映像化に成功した。豪勇サムソンにはビクター・マチュア、デリラにはへディ・ラマール、セマダルにはアンジェラ・ランズベリーが熱演した。なおセマダルの名前は手元にある聖書には見当たらず、映画で使用された名前である(参考:「士師記」、「聖書の世界」自由国民社)世界史こぼれ話
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はじめまして、
「サムソンとデリラ」の1996年版の映画を見たんですけど、
なんのことやら全然分からなくて・・・。
映画はちょっとストーリーを変えてあるようですが、内容はよく分かりました。
ありがとうございました。
投稿: もなみ | 2007年2月12日 (月) 17時17分
おたよりをありがとう。ビクター・マチュアは好きな俳優の一人でとくに「荒野の決闘」のドク・ホリデイが印象にあります。あとは「聖衣」と「サムソンとデリラ」などの歴史劇が似合う俳優です。旧作はセシル・B・デミル監督なのでオススメです。
デニス・ホッパー主演のリメイク作品があるとは知りませんでした。ダイアナ・リグという女優さんもまだ活躍しているんですね。「理由なき反抗」や「イージー・ライダー」からかなりの歳月がたちますが、彼の映画に対する情熱には敬意を払います。
投稿: ケペル | 2007年2月12日 (月) 21時19分