左前の話
花火大会のシーズンである。時折、浴衣を「左前」で着ているお嬢さんをみかけることがある。着物を着たときに自分の右手が懐に入るように合わせるのが「右前」で、男女ともこのように着るのが正しい。男性は洋服が右前なので、間違える事は少ないのだが、女性は左前に着る事に慣れているので、和服に着かえたときも左前で着てしまうことが少なくない。この右とか左とかいうのは着せる人から見てのことなので、着ている本人から見ると逆になるので、ややこしい。左前は死に装束の着せ方だが、これは死んで人は自分で着物を着ることができないので、着せる人から見て左を上にして着物を着せるという理由からである。「あの店も左前だな」と言うことがあるが、左前が落ち目を意味するのは、死に装束でおしまいということからきている。
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