下手物趣味
現在、「げてもの」と聞くと、グロテスクなもの、悪趣味なもの、下品なもの、粗悪なもの、という感じがするが、「げてもの」の起こりは、われわれの祖先が実用のため、切実な要求から生れた手工芸品のことをさした。製作者たちはいずれも名もなく、ただ自分が必要なものなので、これらの日常品を制作したにすぎない。しだがって、その品物は特別に新しい工夫もないかわりに、なんの野心もケレン味もなく、みじんの気どりもなく、それだけに自然に、素直に、のびのびと、大らかな魅力をもつものであった。大正時代の末ころから、都会のデパートや骨董品店の品物が上等と見なすようになり、日常品の並みの雑器は下手物(げてもの)といわれるようになった。ところで、古本屋の業界用語では、下手物(げてもの)とは、切手、マッチラベル、映画パンフレット、映画チラシ、めんこ、絵はかぎ、プロマイド、短冊、色紙など、古本屋が扱いながら、書物でないものをいう。ネットでの販売が普及する現在ではこれらの価値が充分に見直されるようになり、しばしば下手物が高価な値がつくようになっている。
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