柔能く剛を制す
軍讖に曰く、柔は能く剛を制し、弱は能く強を制す
三略は上略・中略・下略の三巻から成るところから名づけられたもので、周の太公望が書き、神仙の黄石公が選録したと伝えられ、同じく太公望の書「六韜」とならび称される。「武経七書」のひとつ。語はその上略にある。「兵法書にいう。柔軟な者が、かえって剛強なものを押さえつけ、弱い者が、かえって強い者を押さえつける」たとえば水はその容れる器に従って曲直方円どんな形にもなる。だからこの世界に水より柔弱なものはないわけだが、しかし水はよく大石を転ばし、谷をうがち、巨物を流し、大船を浮かべる。そればかりか堅城を陥れ、高陵を池となすのも水の力である。水より勝る大きな働きをするものはないのである。最も柔弱である水にどうしてこのように偉大な力が具わっているいるかというに、水は曲折変化して極まりないものであるけれども、常にその水である所以を失わず、その性質を変えることがないからである。この点から考えて見れば、柔なるものが剛なるものに勝ち、弱いものが強いものに勝という道理は自明のことであって、本来われわれはこの道理をさまざまな経験によってもよくわきまえている筈である。それにもかかわらず、いざ実行となると、たちまちこの道理にもとり、武力をふるったり、権力をふりまわしたり、あるいは財力に物を言わせようとして、はては獣力闘争へ至りがちのものである。それは人が心を虚しく柔弱を体して有余を損し、もって社会に奉ずるということができず、徒らに名利や智識の奴となって人為私欲にわざわいされるからのことにほかならない。
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