白の文明
中国の青銅器や日本の縄文土器をみると、たいてい文様が施している。なぜ器物に装飾をするのであろうか。人間は、文様の美しさを発見すると、文様の上に文様を重ねて、文様過多の状態に陥っていく。これは、ひとたび文様の美を知ると、文様の無い空虚さに不安や恐怖心を覚えるからだと考えられている。これを「空白の恐怖(horror vacui)」と呼んでいる。空白を嫌う古代人の心理は、器物に文様をつけるという、激しい表現意欲へと発展していく。
これまで古代ギリシア文明は真白い大理石の彫刻や白亜の神殿に象徴されるように「白い文明」と言われてきた。これは18世紀ドイツの美術史家ヴィンケルマンの説で、彼はエジプトやメソポタミアとは異なったギリシア芸術の独自性を唱えたのである。ところが近年の研究によると、彫刻や建物が白いのは色が年数を経て剥げ落ちたためであり、本来は極彩色の色彩が施されているものが多いことがわかった。ギリシア文明は純粋な「白の文明」ではなかった。しかし未開社会から文明社会になると白への恐怖心も減少していく。白い教会などはその代表例であろう。人間は物質的に豊かになっていくにつれて、白いものに憧れる傾向が増して来る。20世紀の現代建築やインテリアなどをみると、白が基調になっていることが多くみられる。さらに「白の文明」は進展していくであろう。
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