無料ブログはココログ

« ハールレムを守った少年 | トップページ | フィリピンの島々 »

2015年7月 9日 (木)

「活字離れ」 ことばの誕生

Shutterstock_114044002256x300   夏は読書の季節でもある。書店では読書感想文対策の文庫本リストが無料で貰える。涼しい木陰でハンモックに揺られながら本を読むのもいいだろう。だが「若者の活字離れ」という現象が教育関係者に問題視されてから久しい。「活字離れ」という変わった言葉が使われたのは何時ごろからだろうか?。言葉の初出を文献から調査することは気の遠くなるような労力を要する。たとえば「図書館雑誌」や「みんなの図書館」のバックナンバーなどを基にして調査することも可能であるがまだ実施していない。おそらく1980年代初頭には使われていたと記憶するが、実際には1970年代初頭に既に文献に見える。本来は「活字離れ」よりも「読書離れ」のほうが適切な場合もあるが、先行する言葉として「読書離れ」という言葉があったかどうか現在のところ不明である。読書調査などでは前置きのように頻繁に使われるのは何時頃からか明らかにしたいと思っている。主に出版界で「若者の活字離れ」「文芸書は売れない」などという噂が出回ったのが流行の一因であろうか。おそらく1978年の筑摩書房倒産がひとつの転機だったかもしれない。文学全集が売れない時代になった。ざっと30年の歴史がある言葉だが流行語といった華やかなものでないので用語辞典には初出があきらかではない。今後もずっと使われ続けるだろう。初期の文献には次のようなものがある。

「資料からみた活字ばなれ」福沢周亮 言語生活 1979年5月号

「活字離れ」論ノート 水野博介 桃山学院大学社会学論集14-1 1980年

「子どもの読書離れを防ぐには」 作山静男 学校図書館 1988年4月号

いろいろ調査していくうちに、「活字中毒」という言葉もあることに気がついた。文献で古いものをあげる。

「もだえ苦しむ活字中毒者地獄の味増蔵」 椎名誠 1982年

「素敵な活字中毒者」  日本ペンクラブ 1983年

「あえて時代錯誤に挑む二つの百科事典 活字ばなれ派(小学館)×活字中毒派(平凡社) 前田愛 Asahi Journal 1984年12月7日

   そして、現在確認できるなかで最も古い文献。

「活字離れの現実をどう考えるか」講演会の記録 出版科学研究所           
1972年11月

Photo_2

(ことばの疑問)

« ハールレムを守った少年 | トップページ | フィリピンの島々 »

「ことば」カテゴリの記事

コメント

先日、通りがかりに立ち寄って以来、いろんなカテゴリーに薀蓄を傾けておられるこのブログが気に入って、ちょくちょく覗くようになりました。

言葉は時代と共に生きているので、時として違和感のあるままに人口に膾炙されることが少なくありません。感じ方も人さまざまで、「活字離れ」を変わった言葉とは感じない向きもかなりの数にのぼるのではないでしょうか。
今日TVのニュースで取材を受けた方が、「情報がひとり走りする」という表現をされているのを聞きました。本来は「ひとり歩き」というところですが、情報伝播の速さに思わず「ひとり走り」と言ってしまったのかもしれません。
「安くつく」という言い方も気になります。「原発のほうが発電コストは安くつくと思ったら・・・」というような表現ですが、ここは「安くあがる」とするべきでしょう。
まだまだありますが、きりが無いのでまた今度。

興味深いコメントを寄せていただきありがとうございます。NHKのお昼ごろの番組で梅津というアナウンサーが言葉の薀蓄を集めたコーナーがあって関心をもつようになりました。ただし私の関心は、国語としての誤用ではなくて、風俗社会的なものです。ところで「活字離れ」がなぜ変わっているか、ということですが、本来「読書離れ」と言ったほうがよいのですが、おそらくマンガやコミックも一応読書なので、それらと区別するために、あえて「活字」と強調したのではないか、と考えいます。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« ハールレムを守った少年 | トップページ | フィリピンの島々 »

最近のトラックバック

2017年8月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31