スフィンクス建造年代論争
ギザの大スフィンクスは世界で最も印象的な記念物といわれる。長さ73m、高さは最大20mに及び、ピラミッドの石材を採石した後の岩山を彫って作られたと考えれていた。しかし、このピラミッドの守護神とみられたスフィンクスがピラミッドが建造されるよりもずっと古いものであるという仮説を考えた学者がいた。フランスの数学者R・A・シュヴァレ・ルービク(1891-1962)である。1990年代になってアメリカの小説家ジョン・アンソニー・ウエストはこのルービクの説を検証し、チャールトン・ヘストンが案内役を務めたドキュメンタリー番組「スフィンクスのミステリー」(1993年)を製作した。彼はこの番組でエミー賞を受賞している。
従来、スフィンクスの顔は第4王朝のカフラー(前2558-2532)を表現し、その建造年代は前2550年頃とされていた。しかし彼はスフィンクスの大部分を占める胴体部分の長い年月にわたる風化に注目した。平行線に走る侵食は風によるものであるが、縦に走る侵食は雨によるものである。古気象学によるとエジプトで大量の雨が降っていた時期は氷河期最後の降雨であり、紀元前9000年から1万年のことである。つまりスフィンクスの建造がピラミッドよりずっと古く前11000年頃であったというのである。これに対して考古学者からは反論が寄せられた。古王国時代以前にスフィンクスを作るような文明が存在したとは考えられない。そのような文明が存在したという遺物が1つも発見されていない。のちにグラハム・ハンコックなどが古代の超文明の存在を支持したが、現在では学会でほとんど無視されているようである。近年の研究ではカフラー王以前に建造されたライオン像に王の顔を彫ったとする説が有力視されている。
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