なぜ満月の夜、狼男は変身するのか?
怪奇映画は無声映画の時代から人気があり、いまやホラーとしてジャンルを確立している。そのルーツは、変身はロバート・ルイス・スティーブンソンの「ジキル博士とハイド氏」(1886)が、美しい女性への思慕はユゴーの「ノートルダムのせむし男」(1831)などの話がホラーにインスパイアーされている。ベニチオ・デル・トロの「ウルフマン」(2010)も変身と美しい女性への思慕が盛り込まれており、ロンドンの舞台俳優が父親の影響で狼男となるストーリー。父子の狼男対決というのが見ものである。
狼男の映画は満月の夜に変身する設定や、美しい女性への恋愛感情はお決まりごとになっている。なぜ満月の夜に変身するのだろうか。狼男のことを西欧ではライカンスロープという。ギリシャ語でリュコス(狼)とアントローポス(人間)とを合わせた合成語である。満月の光で変身したり、ライカンスロープという言葉は古くからある話ではないが、そのルーツは狼の毛皮を身にまとうと、狼の能力を得られるとする、共感魔術あるいは類感魔術にある。北欧にはベルセルク(熊の毛皮を着た者)という言葉があり、熊の毛皮を着ると熊と同化して戦闘能力が高まると信じられた。狼男に噛まれると狼男になって伝染してしまうという設定は、おそらく狂犬病などの感染からきているのであろう。ドラキュラ伝説や人狼伝説は東欧などに古くから伝わるが、フランケンシュタインはメアリー・シェリーの「フランケンシュタイン」(1818)に登場する博士の名前が広まったものである。ミイラ男はボリス・カーロフの映画「ミイラ再生」(1932)による。狼男の映画はロン・チェイニー・Jrが知られるが、すでにヘンリー・ハル主演で「倫敦の人狼」(1935)がある。(Lycanthrope,Berserkr),
1920「狂へる悪魔」 ジョン・バリモア
1931 「フランケンシュタイン」 ボリス・カーロフ
1931「魔人ドラキュラ」 ベラ・ルゴン
1932「ミイラ再生」 ボリス・カーロフ
1933「キングコング」
1935「倫敦の人狼」 ヘンリー・ハル
1940「ミイラの復活」トム・タイラー
1941「狼男」 ロン・チェイニー・Jr
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