歴史のヒーロー沖田総司
新選組の天才剣士といわれる沖田総司(1842-1868)は、白河藩士の家の長男として生まれた。家庭の事情で、少年の頃から試衛館に預けられ、免許皆伝、塾頭を努めるほどの腕前になった。剣は大へんな天才で、電光石火の三度突きという天然理心流の達人であった。池田屋斬り込みの時は一番働いたとさえいえた。
背の高いやせた男で肩がぐんと上がり、頬骨が高く口は大きく、それでいてどこか愛嬌があった。ドラマ映画では、よく美男であったとされるが、特にそのような伝承はない。
ドラマ新選組血風録第8回「長州の間者」では沖田総司の武士としての清冽な一面がみえる。浪人の深町新作(片山明彦)は桂小五郎(名和宏)の命で新選組に間者として入隊する。古高俊太郎の書類から深町が長州の間者であることを知った土方は、沖田に深町を斬ることを命ずる。
沖田「命令によって、長州の間者を働いていた君を討ち取る」
深町「知らん。古高俊太郎なんて、俺は知らん」
沖田「君も間者として新選組に入隊したぐらいの志士だ。武士らしくしたまえ」
司馬遼太郎の原作は次のようにある。「新作は、主膳の最期をおそらく見とどけることはできなかったろう。主膳を斬ったとたん、どうしたことか、夏雲を見た。さらにのけぞり、鉾の尖端の余りが眼に入った。それらが大きくまわってやがて暗くなったとき、新作の死骸の横で沖田総司が、鉾を無邪気にながめながら丹念に刀をぬぐった」
原作ではニヒルな沖田の一面が描かれている。屯所での沖田はいつも笑談をいっていて、天真爛漫であった。酒は飲んだようだが、女遊びなどはしなかった。しかし、そんな沖田にも恋があった。ある医者のもとで病気を診てもらっている時、行くと取次ぎに出てくる娘がしとやかで初々しく、顔を会わせると、沖田の方でも顔を赤らめた。娘の方でも沖田を好きになったらしい。沖田は、悩んだ末に近藤に打ち明けた。近藤はよくよく考えて「それは断念した方がよい」と首を横にふった。新選組隊士は九分通り命はないものと思わなければならぬこと、沖田は肺結核の病者であること。「とてもお前ではその娘の一生を幸福にしてやれない。ほんとうにその娘が好きならば、あきらめるべきだ」と、しみじみさとした。「わかりました」と沖田は近藤の前を退いた。これが沖田総司の短い生涯で唯一の恋だった。
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新選組血風録の中の「沖田総司の恋」を描いていますがとても好きな場面です。私が18か9のころに読んで記憶に残っています。
投稿: 宮良 | 2008年3月12日 (水) 01時17分