ことこと笑う
「伊豆の踊り子」の湯ヶ野共同湯の場面。「若桐のように足のよく伸びた白い裸身をながめて、私は心に清水を感じ、ほっと深い息を吐いてから、ことこと笑った」
「ことこと笑う」の「ことこと」という擬音語は辞書にはない。川端康成の造語らしい。主人公の学生が旅館の窓から、対岸にいる踊子の真裸を見た。「ことこと笑う」という表現に、朗らかな喜びを感じて、心が澄んでゆくのがよく伝わっている。
川端が1926年に発表したこの小説は、7年後に田中絹代で映画が作られ、1974年の山口百恵まで6度も映画化され、いずれも話題を呼んだ。いわばロードムービーとして映画化しやすのも理由の一つとしてあげられるが、やはり身分違いの淡い恋がどの時代にも大衆の感傷を誘うのであろう。しかし40年もの間、この名作が再映画化されないのも不思議である。ヒロイン薫には山口百恵以上に原作の雰囲気を醸しだす相応しい女優が現れないからであろう。
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