痔瘻の人間史
痔といえば中年の男性というイメージがあるが、女性にも結構多いらしい。痔はとくに日本人に多くみられる病変であり、成人の50~80%は痔核を有するといわれている。だが西洋人にもないわけではない。ルイ14世、ナポレオン、マーラー。ルイ14世は世界で最初に痔の手術をした人物である。それにベートーヴェンは耳疾から聴覚を失ったことはよく知られているが、生涯人知れず痔にも苦しんだ。女性よりも男性に多くみられるが、患部の位置が位置だけに羞恥心から診療・治療を受けずに放置しておく場合が少なくない。
歴史上の人物では、加藤清正、大岡忠相、杉田玄白、乃木希典、野口英世。野口は「実は小生昨年十月頃より痔をなやみ夜分も安眠を不得ず、月を追うて重り行く傾向有之候」と手紙に書いている。作家は作品や日記に痔疾のことを書くので記録として残りやすい。松尾芭蕉、正岡子規。夏目漱石は「彼岸過迄」を執筆中に神田の佐藤病院に通院していた。芥川龍之介は「歯車」で「暫らく歩いているうちに痔の痛みを感じ出した」とある。横光利一は「機械」の執筆中の痔疾のため2ヵ月入院している。(参考:立川昭二「病いの人間史」)
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