ちょっとシュールな感じの映画がステキ
キリコの絵は自分がかって、この光景を見た、という不思議な憂鬱、そして不安感と幸福感をもたらす。精神分析でいう「既視感(デ・ジャブ)」である。アニメ「千と千尋の神隠し」の冒頭シーンに古い階段に立ち並ぶお店や料理屋。大正か昭和の初めころに似た風景だが、台湾の九份茶坊がモデルといわれる。本当はみたことはないのだが、どことなく郷愁をさそう。キリコの絵も本当は見たことはないのに、「どこかでみた風景」を感じさせる。明石知幸監督の「キリコの風景」(1998年)。刑務所から出所した亭主が別れた妻・霧子を探して、函館の町をさまよう話だが、超能力がついてどこかシュールな感じがする。興行的には失敗しただろうが、小林聡美はこの後「かもめ食堂」「めがね」「プール」と続くシュールな感じの先駆的作品となった。アラン・レネの晩年の作品「風にそよぐ草」(2009年)を見た。流石にフランス映画のシュールな感覚はすばらしい。盗まれた財布をきっかけで、初老の男女が魅かれあうプロセスをコミカルに、そしてシュールに描いている。題名はアスファルトの隙間に咲く草にも、人を愛する情熱は絶えることがない、といつたような意味であろうか。ラストで飛行機があっけなく墜落して死んでしまうのもシュールな結末である。
« 態々(わざわざ) | トップページ | 四角な座敷を丸く掃く »
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- 「秋ドラマ」どれを見る?(2023.10.14)
- 2023年の夏ドラマ(2023.07.14)
- 今を生きる女性たちを描く(2023.05.01)
- 春のおススメ新番組紹介(2023.05.14)
- 満天のゴール(2023.03.25)
キリコの絵画、不思議な感覚しますね。
人間が死に絶えたあとの静寂みたいな・・・。
投稿: 根保孝栄・石塚邦男 | 2015年1月15日 (木) 08時00分
「風にそよぐ草」、昨年、BSで放映していて見ました。恋する相手の女性を演じるサビーヌ・アゼマが、年齢を重ねてもカッコいい佇まいだなぁ、と思ったのですが、アラン・レネ監督の奥さんだったんですね。
投稿: | 2015年1月15日 (木) 12時29分