四角な座敷を丸く掃く
四角な座敷を掃除するのに、まん中だけを丸く掃いてすますところから、横着でいいかげんな仕事のたとえ。チャップリンの言葉に「アメリカ人は四角い部屋を丸く掃くが、日本人は四角く掃く」がある。これはチャップリンの自伝に登場する秘書の高野虎市(画像、こうのとらいち 1885-1971)のことで、細かいところまで気を配る勤勉な人だった。しかし「四角な座敷を丸く掃く」の逸話は寛永の頃の老中、土井利勝(1573-1644)の逸話で知られる。家康、秀忠に仕え、家光のとき、後の大老にあたる職に就いた。後任者に大老の心得をきかれて、「四角な座敷を丸く掃くようになされよ」と答えたという。つまり、政治の大局に立つ者は細かいことまで厳しくせず、見逃していいところは見逃せという教えである。言葉の起源は正反対の意味で使われたのである。なお土井利勝には家康の庶子説がある。(大島四郎「佐倉城主土井大炊頭利勝」 佐倉地方郷土文化研究同好会 1957、鷹見安二郎「土井利勝」)
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