エッフェル塔の股くぐり
英語で「ヘロストラトスの名声」という表現があり、どんな犠牲を払ってでも世間を騒がせ有名になるという意味の言葉がある。むかしへロストラトスという羊飼いがエフェソスのアルテミス神殿に放火した。捕まったヘロストラトスは罪を悔いるどころか、自分の名を歴史に残すため、最も美しい神殿に火を放ったと述べた。怒った市民はヘロストラトスを死刑に処しただけではたらず、この先へロストラトスの名を口にした者は死刑にして彼の名前を歴史から抹殺することを決めた。だが現実にはヘラストラトスの名は著名人とは言わないまでも、21世紀の時代ネットなどで容易に調べることができる。
世間をアッといわせたいとおもう人間はいつの世にも現れる。1926年11月のある朝、パリに住む若い飛行家レオン・コローは周囲の人にエッフェル塔の股くぐりを実行すると言い出した。なんでそんな危険なことをやるのかという質問に対して、コローは「シャン・ド・マルスに住んでいる歯科医の兄貴をびっくり仰天させるためさ」と答えたという。コローの操縦の腕前はあざやかで、民衆も成功するのではないかと期待した。だが不運にも真正面に太陽が顔を出して、コローが一瞬目がくらみ、つぎの瞬間、無線用アンテナに機体の一部がひっかかり墜落した。コローは即死し、新聞には「近来まれな愚挙」と書かれた。だがレオン・コロー(24歳)の名前はエッフェル塔の歴史の1コマに記されている。(Herostratus,Herostratic fame,Tour Eiffel,Leon Collot)
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