千姫とお菊
永正年間のこと。姫路城の城主・小寺則職の家老・青山鉄山が、お家のっとりを企てていた。しかし、この企みを忠臣・衣笠元信の許嫁で、青山家の女中であった「お菊」が探知し、城主の難を救う。しかし、そのような「お菊」の活躍も空しく、後に青山家のお家のっとりは成功。許嫁の元信は龍野に放逐される。しかし、「お菊」はその後も青山家に留まり、探索するが、ついに青山鉄山の家来・町坪弾四郎にばれてしまう。弾四郎は「お菊」にそのことを黙っている代わりに、自分との結婚を迫る。けれど、「お菊」は頑としてそれを承知しない。怒った弾四郎は、10枚1組の家宝の皿の1枚を割ってしまい、その罪を「お菊」に着せて責め殺した上、井戸に投げ込んでしまった。それからというもの、この井戸の傍に「お菊」の亡霊が現れ、「一枚、二枚・・・一つ」と皿を数える声が聞こえてくる。
姫路城には現在も「お菊井戸」が残っている。だが姫路といえば徳川家康の孫娘、千姫が本田忠刻と幸せに暮らしたところである。忠刻の死後は落飾し、天樹院と号して江戸で余生を送る。40年の長い寡婦生活が続いたため「吉田通れば」の俗謡が生まれ、吉田御殿における千姫乱行の噂が広まった。通りがかりの美男子を招き入れては、殺して井戸に投じたというのである。やがて屋敷のそばを通る者はひとりもいなくなり、天樹院は花井壱岐という、屋敷に仕えた侍をたらしこむ。ところがある日、その花井は竹尾という侍女と戯れているのを見てしまい、すっかり逆上。嫉妬に狂った天樹院は焼け火箸で竹尾の額に焼き印を押し、殺害して井戸へ投げ入れ、壱岐も長刀で殺した。ふたりの死体は井戸にうち捨てられ、そこには夜な夜な二人の亡霊が現れるようになる。二人の死骸を呑んだ古井戸のあるこの屋敷は、天樹院が没すると、とり壊されて更屋敷となっていった。その跡地を拝領したのが、旗本青山主膳である。番町皿屋敷お菊の怪談噺へと続く。
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