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2014年11月10日 (月)

思い出せない愛の記憶

74ace10d5f6c29be85c7983312278ca0    ホテルの一室。ソファーに座っているユジンとミニョン。

ユジンは、ミニョンの顔を まじまじと見つめている。ユジンにはまだ信じられなかった。

ユジン「こうやって会えるなんて、信じられないわ。チュンサン・・・、チュンサン・・・」

ミニョンは、何度も名前を呼ぶユジンの顔を見つめながら言った。「ユジンさん。話したいことがあればなんでも言ってください。僕が・・・思い出すことできないけど、一つ残らず聞いてあげますから」

ユジン「チュンサン・・・。わたしね・・・こうして声に出して名前を呼ぶのが夢だったんです。会いたくなるときに、いつも声に出して呼んでみたかったんです。でも、もし呼んでも返事が返ってこなかったら、本当に死んでしまったような気がして、どうしても呼ぶことができなかったんです。そうなの。わたしチュンサンが死んだなんて信じたくなかったわ。わたしと会う約束してたのに。確かに約束したのに、守らないはずないもの」

ミニョンは切ない眼差しでユジンを見つめた。何も思い出せない現実が、胸を痛く押し潰した。そして訊ねた。「僕が約束したんですか?」

ユジン「思い出せませんか? わたしと会う約束してたのに・・・思い出せませんか?」

ミニョン(首を横に振る)

ユジン「何も思い出せないんですか? わたし、手袋も貸してあげたのよ。ピンク色のミトン、大晦日に返してくれることになっていたのに。何も思い出せません? 何ひとつ?」

(ミニョンは胸が張り裂けそうで、かすかに頷くことしかできない。ユジンにも それはわかってはいても、それでもやはり寂しくなる)

ユジン「じゃあ、わたしにピアノを弾いてくれたことも・・・覚えてないのね? 授業を抜け出して、自転車に乗ったことも、手をつないでくれたことも?」

ミニョン「ごめんなさい・・・ごめんね。本当に ごめんなさい」

ユジン「いいえ、ミニョンさんはちっとも悪くありません。悪いのはみんなチュンサンよ。ミニョンさんは覚えてないんだから。全部チュンサンが悪いんです。生きてるくせに、わたしのことすっかり忘れるなんて、わたしは何一つ忘れてないのに。みんな覚えてるのに(涙がとめどなく流れ落ちる)」

ミニョンは胸が苦しかった。泣き続けるユジンを抱きしめたまま、十年の悲しみを吐息とともに吐き出していた。(「冬のソナタ」第14話)

   ドラマや映画で記憶喪失を扱った作品は多い。「心の旅路」(1942年)がベストだが、ほかにも「銀座の恋の物語」(1962年)や「北穂高絶唱」(1968年)、「私の中の消しゴム」、「君に読む物語」、「博士の愛した数式」などの作品がある。

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