矢作橋の日吉丸
日吉丸は尾張から三河へ行く途中、木綿布子をぬう大針を安く買いこみ、これを行くさきざきで売り、飯代や草鞋銭にあてた。夜は、こもをかぶって矢作橋の下で寝ていた。そして武将となった自分の夢を見ていたが、夜なか、数頭の馬蹄の音に目をさます。野武士めいた身ごしらえの男たちが、日吉丸の頭のそばを馬で通り過ぎていく。寝ていた日吉丸は、野盗のかしら蜂須賀小六に蹴とばされた。怒った日吉丸は、小六の槍をつかんで、「無礼者!」と怒鳴った。
大きな声に驚いた小六は、「こんなところに、山猿がおる」と笑った。「おもしろそうなやつ。だが、猿め、三日のうちにわしの刀を盗むことができたら、使うてやろう」という。日吉丸は、三日めの雨の夜、軒先にかさを立てかけておき、いかにもしのび寄ってたたずんでいるかのようにみせて相手をゆだんさせ、そのすきをねらって刀を盗んだ。小六はその才知に舌を巻いた。
その小六が、のちには羽柴秀吉(日吉丸)の部下になるのだから、人の運命というのはまったくわからない。
愛知県岡崎市を流れる矢作川に最初に橋が架けられたのは関ヶ原の翌年の1601年のこと。つまり豊臣秀吉はすでに死んでおり、この話は後世の創作話とされる。
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