「あの人のやることにはそつがない」などという。「むだがない」「手ぬかりがない」というほめ言葉である。「そつ」とは何か、はっきりしない。「卒」と書くのは当て字である。
18世紀の「和訓栞」には「そつ 俗に費(ついえ。無駄な出費のこと)の事に云ふは、損墜の音成べし」とある。「損墜」(そんつい)は漢語。「二程全書」に「巨木を以て石を架して之が屋とす。計るに百年ならずして、必ず当たる當に損墜すべし」とある。上から重いものが落ちるさまを「墜」という。つまり、橋・トンネルの劣化を調査して安全に整備しておくことが「そつがない」の原義であろう。(阿部猛「雑学ことばの日本史」) ことばの疑問
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