まぼろしの永世中立
現在、世界で永世中立を認められている国は、スイス、オーストリア、トルクメニスタンの3国である。永世中立国とは、永久に他国間のいかなる戦争にも関係しない義務を負うとともに、その独立と中立を相手国に保障されている国である。だが軍事的な同盟国が無いため、他国からの軍事的脅威に遭えば、自国のみで解決することを意味する。そのためスイスは徴兵制があり、約40万人の予備軍がいる国民皆兵の軍事国家である。18歳から34歳までの全てのスイス人男性は、法律により強制的に徴兵される。他国の侵入などの非常事態が発生すれば、6時間以内に30~40万人の兵士が動員できる。戦後日本においても、一時期、中立国となるべきであるという主張をとる者も多くいたが、朝鮮戦争の勃発により、自由主義陣営の一員となり、永世中立化は非現実的ととらえる見方が支配的である。憲法の解釈を変更して、集団安全保障や自衛隊を強化しようとする考えが優勢になりつつあるのが今日的状況である。憲法学者の田畑忍(1902-1974)や土井たか子のような非武装永世中立の九条護憲の立場は次第に衰退しつつある。永世中立は非現実的であっても、米軍の駐留をいつまでも認めて、軍事基地を貸すことは政治的解決をつけなければいけない課題である。
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