「ウサギとカメ」江戸の人は知らなかった
「アリとキリギリス」「北風と太陽」などイソップ物語は、ながい間世界中の人々たちに読み継がれている。とくに足の速いウサギが自らの怠慢により競争に負けるお話「ウサギとカメ」は日本の昔話ではないかと思うほど広く知られている。「1593年、天草で刊行された伊曽保物語にその最初の形が認められる」(「世界大百科事典」1998年版)とあるのは間違い。実は「ウサギとカメ」の話は載っていない。1600年に出版された古活字版伊曽保物語にもない。近世の出版物からは未だ「ウサギとカメ」は文献上発見されていない。おそらく江戸時代にはまだ伝わらなかった可能性が高い。一般に普及したのは明治以降であると考えられる。1887年の小学校の教科書「小学読本」(竹下権次郎編纂)の巻3下の第35課に「油断大敵」という題で教訓として掲載されている。
ところで17世紀のラ・フォンテーヌはイソップの話を少し変えている。ウサギはわざと亀を先に走らせて、後から追い抜く予定だったが、スタートがやや遅かったので亀に負けてしまうというもの。
絵はがきにある言葉、rien ne sert de courir は「あわてても無駄だ」の意味。
(The Tortoise and the Hare)
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