売名行為の歴史
売名行為とは、自分自身の名前を売るために行う行為で、通常、悪い意味で用いられる。違法な手段を使うと、当然、刑事や民事の法律問題が生じるが、芸能人が震災後、被災地へ行ったことをブログに書いて、その行為が「売名行為」として世間から非難されるという事例など現代社会には枚挙にいとまがない。ここでは犯罪や社会的逸脱行為としての売名行為をとりあげる。
記録に残る最も古い売名行為はBC356年7月21日、古代ギリシャの羊飼いへロストラトスが歴史に名を残したいという理由でエフェソスのアルテミス神殿に放火した事件であろう。政府はヘロストラトスに死刑を宣告したのみならず、彼に関する全ての記録を抹消する「記録抹消罪」を適用し、この先ヘロストラトスの名を口にした者も死刑にして彼の名を歴史から抹殺することを決めた。だが彼の名前は消えることはなく、むしろ皮肉にも後世に長く残った。歴史家テオポンポスがこの事件と犯人を記録に残し、キケロ、プルタルコス、ストラボンら歴史家たちもこの事件に触れており、欧米では有名な故事のひとつになっている。英語で「ヘロストラトスの名声」Herostratic fameとは、「どんな犠牲を払っても有名になる」という意味。通常の場合、売名行為のことは、publicity stuntとか、act of self-advertisementという。
我が国における売名行為に関わる事件としては、力道山刺殺事件(1963年)があげられる。村田勝志は力道山を刺した男ということでヤクザ組織での知名度がアップし組長にまで出世した。豊田商事永野会長刺殺事件(1985年)では犯人2人が英雄視され翌年ビートたけしで映画化された。秋葉原通り魔事件(2008年)の加藤智大は犯行メールを流し、世間の関心を買おうとしている。現代社会における都市的逸脱行為がさまざな問題をはらんでいる。殺人、リンチ、放火、自殺と自己中心的パーソナリティーが劇場型の犯罪行為になる可能性がみられる。都市生活者が携帯で撮影する姿も異常といえる光景である。(Herostratus)
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