渡世人の口上
時代劇のヤクザ映画をみていると、旅の博徒が「おひけえなすって」にはじまる仁義を切るシーンがよくあった。フーテンの寅さんがよくやる香具師やテキ屋の口上もこの流れを汲むものであろうか。
渡世人の口上が実際にどのような内容のものか歴史的文献ではあまり探せなかったが、愛知県の伊六万歳師、中村源若三代目の仁義が残っている。明治20年ころのものである。
おひかえなさんせ、おひかえなさんせ、早速おひかえあって、ありがとうござんす。手前、生国と申しまするは、尾州は尾張の国、海部郡は佐藤村、字草平新田、番地は六十二番区に住居をかまえております。渡世上についての親分と申しまするは、同じ尾州の国、海部郡は佐織村、字草平新田、番地は六十一番区に住居をかまえておりまする。名前発しまするは失礼にござんす、本名は加藤源七にござんす。二代目と申しますのが加藤源内、芸名発しまするは失礼さんにござんす、中村源若二代目。手前は、中村源若三代目つがさしております。いずれの土地へあがりましてもお師匠さま、またお友達の厄介、粗相になりがちの手前にござんす。行く末万端、ご昵懇(じっこん)にて、よろしくお引き立てのほど願っておきます。(参考文献:「雑学面白ことば」三省堂)
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