「飢餓海峡」と「砂の器」
以前から水上勉「飢餓海峡」と松本清張「砂の器」は共通するものがあると感じていた。水上勉は28歳で「フライパンの歌」がベストセラーとなったものの、その後10年、鳴かず飛ばずで、不本意ながら洋服の行商をしていた。1957年、東武電車の駅で松本清張の「点と線」が連載されている「旅」を買った。水上は清張の簡潔な文体に感心した。清張より10歳年下の水上勉は「点と線」をならって「霧と影」を執筆する。共産党トラック部隊に想を得た、忘れられない作品である。続いて「海の牙」「耳」で直木賞候補となり、1961年「雁の寺」で直木賞を受賞する。「飢餓海峡」も、人生の縮図が見事に描かれている清張の「砂の器」に影響された作品である。
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「砂の器」「飢餓海峡」どちらも、暗く凄惨な過去を消して成功し、地位も名誉も裕福な生活も手に入れた人間の目の前に、その過去を知る善良な人物が、懐かしく思い、ただひと目会いたさに現れたのを殺害してしまう、読後にやるせない思いを残す小説でした。幾度も映画、ドラマ化されていますよね。丹波哲郎が刑事、加藤剛が和賀英良を演じた映画「砂の器」が、要所に流れる音楽も圧巻で、父(
加藤嘉)子で放浪する場面が悲しく記憶に残っています。
投稿: イクちゃん | 2014年5月31日 (土) 08時13分