安物の感動はいらない
「現代のベートーベン」とされる全聾の作曲家が実は曲作りをしておらず、別な音楽家がキャラクター作りで共同で世の中に売り込んだものであった。佐村河内守のCDは累計13万枚というクラシックでは異例のヒットとなった。人気を後押ししたのはNHKのドキュメンタリー番組(2013年3月31日放送)である。ペテン師のような行為であるが何とも笑い話にもおもえる。むしろ「魂の旋律」事件は一般日本人とメディアが感動を求めるあまり、音楽以外の付加価値を重視した結果ではないか。購入したCDの音楽性や芸術的価値は、誰が作曲していようと優れたものであるならば不変のはずである。いつから芸術そのものではなく、人物の付加的なものに価値をもつようになったのであろうか。感動を求める市民と、感動を提供するメディア。利益が完全に一致し、メディアは感動の素材になりそうな物語を求める。いま連続ドラマ「ピュア」を見ているが、和久井映見が扮する彫刻家は知恵おくれだがその芸術的才能でメディアが注目する。彼女を愛する周囲の人はメディアが興味本位で取材することを心配し、マスコミから遠ざけようとする。記者と和久井との恋愛が絡みながらストーリーが展開していく。一般大衆が真の芸術性を理解することはむずかしい。むしろ興味はゴシップなようなものに集まる。人気や関心も一時的なものであることが多い。NHKの「プロジェクトX」も感動的な話が多かったが、視聴者が期待する感動を求めるあまり、ヤラセや感動を誇張した番組になってしまった。メディアにふりまわされることなく、「市井の人」としての立場を貫き、自己の研究や創作活動をすすめていくのがいちばんである。
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