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2014年2月18日 (火)

看護婦の日記

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    映画「看護婦の日記」(吉村廉監督)は太宰治の戦後第1作の小説「パンドラの匣」を大映が昭和22年に映画化した作品である。お話は終戦直後の高原の結核療養所を舞台に「ひばり」と呼ばれる若い患者(小林桂樹)と看護婦・竹さん(折原啓子)とマア坊(関千恵子)との淡い恋愛心理を描いている。結局、ひばりが思いを寄せた理想的な女性の竹さんは院長(見明凡太郎)と結婚し、哀しい思いをする。映画は青年の淡い悲恋として淡々と明るく描いている。原作の太宰の小説はもともと仙台の新聞「河北新報」に連載されたものだが、オリジナルは昭和18年に木村庄助の闘病日記をもとにして書き下ろした「雲雀の声」である。昭和19年に印刷に廻されたが空襲のため本屋が全焼し、ついに日の目を見なかった。その時、残ったゲラ刷りをもとにして戦後「パンドラの匣」として発表した。太宰は「この小説は健康道場と称するある療養所で病ひと闘っている二十歳の男の子から、その親友に宛てた手紙の形式になっている。手紙の形式の小説は、これまでの新聞小説には前例が少なかったのではなからうかと思はれる。だから、読者も、はじめの四五日は少し勝手が違ってまごつくかも知れないが、併し手紙の形式はまた、現実感が濃いので、昔から外国に於いても日本に於いても、多くの作者に依って試みられて来たものである。パンドラの匣といふ題に就いては、明日のこの小説の第一回に於いて書き記してある筈だし、此処で申し上げて置きたいことはもう無い。甚だぶあいそうな前口上でいけないが、しかしこんなぶあいそうな挨拶をする男の書く小説が案外面白い事がある」と宣伝している。 

   映画に若い看護婦役で出演した関千恵子は「大映ファン」という雑誌のインタビューで三鷹の太宰治の家を訪問している。映画「看護婦の日記」は太宰本人も見たことと思う。今となっては貴重な1本である。開けてはならぬ口の封印を切り、人間世界の災禍がでたが、底に芥子粒ほどの小さい光る石が残っていた。その石にかすかに「希望」という字が書かれていたというギリシア神話に由来する。終戦直後という時代背景を考えると、太宰は読者に戦争の災禍にあっても明るい希望をもって書いたように受け止められる。

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