ラブソングができるまで
いま日本でも韓国でも恋愛映画、なかでもハッピーでロマンチックなコメディ、いわゆる「ラブコメ」というジャンルが人気だ。ロマコメとラブコメとの違いは、どちらも恋愛とハッピーエンドを条件として区別はなかなか困難であるが、ラブコメはより喜劇性、ドタバタ性の強いものをいう。例えば、「ローマの休日」はロマコメであり、ドラマ「おくさまは18歳」は典型的ラブコメである。現在、日本では上野樹里や井上真央、韓国ではキム・ジョンウン、キム・ハヌルなどがラブコメの女王といえる地位を確立している。LaLaテレビ放送中のソン・ヘギョ&ピの「フルハウス」などは典型的ラブコメであろう。日本映画での元祖ラブコメといえば薬師丸ひろ子&鶴見辰吾の「翔んだカップル」(1980)という説がある。しかし、ラブコメのルーツとなるとやはりハリウッド映画であろう。
19世紀末のヨーロッパの演劇界や文学は悲劇的な結末のものが流行した。その影響を受けたアメリカ映画界でもサイレント初期はリリアン・ギッシュの「散り行く花」、グレタ・ガルボの「肉体の悪魔」(1927)、「恋多き女」(1929)など悲恋物語ばかりだった。「アメリカの恋人」とよばれ愛されたメリー・ピックフォードが元祖ラブコメの女王といえるかもしれない。トーキー時代になってダンスとジャズのミュージカル映画が全盛となる。このころアメリカ映画はほとんどがハッピーエンドというアメリカン・ロマンスのスタイルが成立したとみている。そして銀幕を不滅の黄金コンビが彩った。ルビー・キラー&ディック・パウエル、ジンジャー・ロジャーズ&フレッド・アステア。元祖ラブコメといえばクラーク・ゲイブル&クローデッド・コルベールの「或る夜の出来事」といわれている。しかしロマコメとラブコメとの区別がつきにくい作品であろう。真の意味でのラブ・コメ映画の出現となると、チビッコの青春コンビ、ジュディ・ガーランド&ミッキー・ルーニーのアンディ・ハーディシリーズ(1938-1941)だろう。残念ながらこの時期、戦争のために日本では劇場公開できなかったため、ラブコメが日本に移入することはなかった。戦後アメリカ映画のラブコメのヒロインといえば、シャーリー・マクレーン、ゴールディ・ホーン、メグ・ライアン、キャメロン・ディアス、ドリュー・バリモア、キルステン・ダンストと続々と現れている。
つまり日本、韓国でのラブコメの成立は、アメリカに比べ50年は遅い。なぜこれほど遅れたのだろう。吉永小百合&浜田光夫、山口百恵&三浦友和の共演映画も観客は悲劇性を好んでいた。ラブコメも作ってはみたがファンには不評だった。日本でのほんとうのラブコメの登場はバブル期まで待たねばならなかった。
最後に、おすすめのラブコメは「ラブソングができるまで」(2007)。愛するダメ男を演じさせれば右に出る者はいないといわれるヒュー・グラントとラブコメの女王ドリュー・バリモアが共演した最高にベタなラブコメ映画。カップルで映画館へ行き、見終わった後、ハッピーな気分になれる映画である。
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クラーク・ゲーブル「或る夜の出来事」懐かしい!ステキな俳優ですね、言わずと知れた「風と共に去りぬ」のレット・バトラー。…シャーリー・マクレーンは、クリント・イーストウッドと共演の「真昼の死闘」のとぼけた修道女が印象に残っています。ヒュー・グラントは、「ブリジットジョーンズの日記」のプレイボーイのダメっぷり、「ノッティングヒルの恋人」での、冴えない書店の男が笑えます。キャメロン・ディアスは「メリーに首ったけ」が最高にかわいい!
投稿: イクちゃん | 2014年2月14日 (金) 21時23分
シャーリー・マクレーンは「マグノリアの花たち」でのひねくれた老女(心底意地悪では無い)の役が、ほのぼのと笑えて印象に残ります。
投稿: イクちゃん | 2014年2月14日 (金) 23時18分