小野小町「花の色」
古今集巻2の春下(113)に「題知らず 小野小町」とある歌。「小町集」にも「花をながめて」として入っている。
花のいろはうつりにけりないたづらに
我身よにふるながめせしまに
[現代語訳]美しい桜の色は、すっかりあせ衰えてしまったなあ。降り続く春の長雨をぼんやりながめながら、恋の悩みなどの物思いをしていた間に。
この歌は単に花のことを歌ったと見る説と、「花の色」を「容色」とする説と二説ある。古来多くの説が言っているのは「思う男のことにかかわって、物思いをして、空しく世を過ごすうちに、私の容色も衰えてしまったことだ」の意があるとしている。松田成穂は古今集春歌下には、うつろう花、散る花を15首まとめて撰入していることから、単に花のことを歌ったのだとしている。(「花の色は試論」金城学院大学論集31)小野小町は美人であったが、晩年はおちぶれて諸国を流浪したという伝説のため、この歌から容色の衰えを歌ったとする解釈が定着していったのであろう。
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