藤樹の母の教え
中江藤樹は幼い頃、母と離れ、祖父の家に住み込みで学問に励んでいた。しかし、母は病気がちで、離れて暮すようになってからも藤樹は母のことがますます心配であった。冬のある日、とうとう藤樹は良い薬が手に入ったので、祖父の家をこっそり抜け出し、母のお見舞いに行った。戸外でつるべ仕事をしていた母にその薬を差し出して、肩を抱いて家の中へ入ろうとする。ところが母は「おまえは学問をするために生れてきた人だ。母を訪ねる暇はないはずだ。すぐに帰りなさい」と、薬も受け取らず、家へも入れてくれず藤樹を追い返す。母に諭され、雪深い道をとぼとぼと帰っていく藤樹の後ろ姿を、母は涙しながら見送るのである。辛い別れでありながら、母親の子を思う気持ちを理解した藤樹は、その後勉学に励み、人々から「近江聖人」と呼ばれる立派な学者となった。
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