つん読の美徳
これは18世紀の英国詩人ジョージ・クラブの有名な言葉である。これを「よく本を読む人は、つねに本を買いたがるものです」と変えてみたい。
東大仏文科の辰野隆教授は、晩年、これまでの生涯をかけて収集した自分のすべての蔵書を調べてみて愕然とした。フランスの本を3000冊。しかし、そのうちまちがいなく目を通したのは1000冊。きちんと読んだといえるのは、そのうち半分で500冊。3000冊のうち2000冊は、ページも切っていないのだった。
最近の若い人などはタブレット端末を使った電子情報を利用し、多くの書物をもたないという。私の若い頃は、映画や食事代は節約してでも古本を購入した。もちろん図書館からも借りて読んだが、ほしい本は身銭を切っても買うべきだと考えた。だが苦労して集めた本も専門書など、時間が経つと関心が移って読まなくなる本も多い。歴史学でも古代史に関心があったかと思うと、近代史を勉強したくなる。だが高価な本ほど読まないことが多い。アーノルド・ベケットは「自分で読書的雰囲気を醸し出すために、君の周囲を書物で埋めることである。書物の本質から言えば、外面的なことではあるが、これは大切なことである。未経験者の想像以上に大切なことである」(「文学趣味 その養成法」より)と記している。(Arnold Bennett)
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