近世俳句・冬の名句
江戸時代の遊女や李朝時代の妓生(キーセン)など性売買に携わっていた女性たちは、賤民として、はかない人生を送った。ファン・ジニ(黄真伊)は歴史にその名を残されてた極めて稀なケースだろう。小林一茶の句には遊女への優しい同情が感じられる。
鳩部屋の夕日しづけし年の暮
其角
年もおし詰まってなにかと慌しい世間とは無関係に、鳩部屋には冬の淡い夕日がさし、鳩がこもった声で静かに鳴いている。その鳴き声を聞いていると、私もいつしかなごみしずまるのである。
霜がれや鍋のすみかく小傾城
一茶
賑わっていた宿場も、冬には客足がぱったりとだえている。若い遊女が、家の裏手を流れている小川で、なりふりもかまわずに鍋墨をかいている。寒風にさらされながら水仕事をする遊女に身の哀れさを感じることよ。
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