曲がった男
ある日の夕暮れ、ダビデ王は午睡から起きて、王宮の屋上を散歩していた。王は屋上から、一人の女が水を浴びているのを見た。女はたいそう美しかった。ダビデは人をやって女のことを尋ねさせた。それはエリアムの娘バト・シェバ(バテシバ)で、ヘト人ウリヤの妻だった。ダビデはヨアブに命じて、ウリヤを激しい戦いの最前線に出し、彼を残して退却させた。計略どおり、ウリヤは戦死し、バテシバはダビデの妻となった。 しかし神の怒りにふれたダビデは、バテシバに宿した子が死に、ダビデの子であるアムノン、アブサロムと次々に死んだ。ダビデは妻バテシバを慰め、彼女のところに行って床を共にした。バテシバは男の子を産み、ダビデはその子をソロモンと名づけた。主はその子を愛され、預言者ナタンを通してそのことを示されたので、主のゆえにその子をエディドヤ(主に愛された者)とも名づけた。(サムエル記・下11)
NHKで放送しているシャーロック・ホームズの冒険(ジェレミー・ブレット 声・露口茂)「曲がった男」(1984年)を見る。バークレー大佐が死亡する前、ナンシー夫人と口論するのを女中が聞いている。部屋には鍵がかけられ、大佐の死体が発見されて横では夫人が気を失って倒れていた。女中は「デーヴィッド」という名前を夫人が叫ぶのを聞いたが、大佐にも夫人にもデーヴィッドという名前の知り合いは1人もいなかった。警察は夫人を第1容疑者として捜査するが、ホームズは事件が起こった夜、せむし男がいたという事実を知る。その男に会ったことでバークレー夫人が急に大佐を憎むようになったと推理し、ホームズはその男、ヘンリー・ウッドを探し出す。ついにホームズとワトソンはせむし男から事件の真相を聞きだす。せむし男、ヘンリー・ウッド伍長とバークレー大佐とナンシーの3人はインド時代の知り合いだった。ヘンリーもバークレーも美しいナンシーを愛していた。バークレーは卑劣にもナンシーを得るため、ヘンリーを激しい戦いの最前線に出し、彼を残して退却した。ヘンリーは敵から拷問をうけ、せむしのような体にされた。ナンシーはヘンリーが亡くなったと聞かされ、イギリスで大佐と結婚し暮らしていた。だがその夜、騙されたことを大佐になじり、大佐はヘンリーが生きていたことを知り、そのショックで心臓発作のため死んだ。夫人が叫んだ「デーヴィッド(David)」とは「ダヴィデ(David)」のことらしい。バークレー大佐の計略が旧約聖書にあるダビデのようだ、という意味と推理している。「曲がった男」はホームズシリーズの56ある短編のうち20番目に発表された作品である。トリックが面白いとは思えない。ただ聖書の西洋人名を着想している点でユニークである。日本語吹き替え版では少し理解しづらいかもしれない。デーヴィッドがダヴィデからきている。ピーターPeterもイエスの弟子ペテロPetosからきている名前である。
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