一茶集・秋の句
本日は二十四節気のひとつ「白露」。大気が冷え込み、草花に白い露が宿りはじめる頃。満月を愛でながら、収穫を祝う「お月見」をするのもこの頃。
露の世は 露の世ながら さりながら
文化13年4月に生まれた長男千太郎が翌年5月に亡くなった。去年文政元年5月に生まれた長女さとが今年文政2年6月21日、亡くなった。この世がはかないものであることはよく承知しているのだが、それにしてもあきらめきれないものである、との意。
秋の雨 小さき角力 通りけり
いまの平成の世も大相撲では序ノ口力士に対する親方・兄弟子の暴行が問題になっている。180年前、一茶にはすでに弱いものに対するやさしいまなざしがあった。しょぼしょぼと降る秋の雨は、なかなかに侘び侘しいものである。その侘しい秋の雨降るとある村を、褌かつぎらしい小柄な角力取りが、一行に遅れたのであろう、ただ一人冷飯草履でぴしゃぴしゃとはねを上げながら、うすら寒そうにして通って行く。なんとわびしく、哀れな姿であろう、との意。
秋風に 歩いて逃る 蛍かな
秋風の吹くま昼。おとろえかけた蛍が草の葉の上をはっている。何かに追われて逃げているようだ、との意。
名月を 取ってくれろと なく子哉
秋風に むしりたがりし 赤い花
おさな子や ひとり飯くふ 秋の暮
古郷の 留守居も一人 月見哉
麦秋や 子を負ひながら いはし売
仰のけに 落ちて鳴けり 秋の蝉
なきながら 蟲の流れる 浮木かな
又人に かけ抜かれけり 秋の暮
一人と 帳面につく 夜寒かな
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