つくられた神経症
対人恐怖症とは神経症のひとつである。あがり症とも称される。他人の前での失敗経験などをきっかけに、人前で症状が出ることを極度に恐れ、他者の目の前で極度の緊張にさいなまれる。恥の文化を持つ日本において多くみられ、海外においてもそのままTaijin kyofusho symptoms(TKS)と呼称されている。
対人恐怖症は西欧においていち早く見出され、20世紀初頭あたりまでは研究されていたが、その後こうした傾向は衰退してしまい、なかば忘れられた病理と化した。しかしその対人恐怖が、1980年にアメリカ精神医学会が定める「精神障害の診断と統計の手引」第Ⅲ版に、「社会恐怖」として記載されたことを機に、徐々に復活をはじめ、現代では「社会不安障害」という新たな名称のもとに、欧米でも注目されるようになった。1980年代には「まれな病理」とされていた社会不安障害が、2000年の段階では大うつ病、アルコール依存症に次いで3番目に多い精神疾患とされるという驚くべき事実である。こうした背景には、製薬会社の広告戦略の効果がみられる。1990年代に、一部の抗うつ剤に対人的な緊張などを抑制する効果があることが発見され、そしてそれらが社会不安障害の治療薬として認可されて以来、かつてであれば単なる内気といわれていた性格が、病理として認識されるようになるのである。つまり社会不安障害には、製薬会社によって「つくられた病理」としての側面がぬぐいがたく見られる。参考;櫻井龍彦「対人恐怖と近代 恥はいかにして病理化したか」浜松学院大学研究論集7,2011年
« 死に方の研究「車に跳ねられる」編 | トップページ | ぬげた草履 »
「健康」カテゴリの記事
- 読書療法(2023.05.19)
- 恐るべき生活不活発病(2023.03.25)
- 生老病死(2022.06.20)
- 転ばぬ先の杖(2022.04.30)
- 脳に危険なスマホ依存症(2024.06.05)


コメント